作家の安部譲二さんがお亡くなりになりました。
ご冥福をお祈りいたします。
「塀の中の懲りない面々」のブームは覚えています。当時の私はまだ子どもだったので内容はほとんど知りませんが。映画化もされているとのことなので、一度見てみようかと思います。
安部譲二さんは将棋を趣味にされていて、その棋力は二段程度だったそうです。
安部譲二さんの将棋本 プロ棋士との駒落ち対局棋譜集
かなり前の話になりますが、古本屋で安部譲二さんの将棋の本を見つけました。
プロ棋士との2枚落ちの本です。
当時は2枚落ちにも安部譲二さんにも興味がなかったで、中をパラパラと眺めるだけでした。
10人くらいのプロ棋士と指していて、大山名人だけには勝っていたと記憶しています。大山名人が駒落ちで勝つところを見たことがありません。特にこの手の企画では負けるようにしているのでしょう。他の棋士がみんな勝ってしまうのですから。
調べてみたところ、この本のようです。
戦績は2勝8敗2引分けとのこと。二上達也にも勝ったそうです。引き分けとはどういうことでしょうか。
駒落ち上手のプロの心構えについて思うこと
プロ棋士はアマチュアとの駒落ち戦に対する考え方を、各々持っているのだと思われます。
多いと感じるのは、本気は出さないというタイプです。
わざと負けるというのは八百長であり、罪悪感のようなものを背負わされます。
勝ち負け以前に、わざと負けるためのその一手を指すこと自体、大きなストレスになると思います。
そして相手にわざと悪手を指したと感じさせれば(バレれば)、怒り出すかもしれません。
そもそも駒落ちの指導対局というものは、勝てば良し、負けても相手が喜ぶので、勝ち負けにこだわるものではないのです。
一方、本気を出さないというのは八百長ではありません。そして指すのがラクです。
私の行きつけの将棋クラブのおじいちゃんは昔はそこそこ強かったのですが、今では誰にも勝てなくなってしまっています。勝ちたくないので本気を出さずに指すのですが、そうすると結構勝ったり負けたりになります。
おそらくプロもこのような気分で指しているのではないかと思っています。
相手のやりたいことを読み取ってその通りの展開にして負けてやる、みたいなことを考えるプロもいるようです。大山名人はそういうタイプなのかもしれません。
駒落ちでも負けたくないタイプもいて、加藤一二三はその典型でしょう。
手抜きはすべきではない、駒落ちでも負けたくない、プロの技術を見せるべきだ、
色々な考え方があるでしょう。
私の希望としては、2枚落ちの手合いというのは適当に指しても上手が勝ってしまうので、あまり本気を出すものではないと思います。プロの技術を見たいと思うのは、飛香落ちからでしょう。それも最終盤までついてこれれば、そこから先はアマチュア相手に必死になるのも大人気ないような気がします。
まあ色々なタイプがいてよいと思います。プロが本気を出せばたとえ駒落ちでも全国クラスの強豪でもない限り勝てないはずなので、その企画が廃れてしまいます。
安部譲二さんの本も出版できないということになったかもしれません。
アマチュアの私が駒落ち上手、下手をもって思うこと
駒落ち自体ほとんど指すことはありませんでした。多いのは下手でした。
何かの本で読んだような気がしますが、使いものになるのは2枚落ちの定跡だけです。
飛車落ちの右四間は勝ちにくいとプロから直接聞いたことがありますし、木村義雄の「将棋大観」にも書いてあったような気がします。
将棋大観といえば、6枚落ちの定跡は飛車を侵入させるだけが狙いでした。そして他のコマを全く使わないので、嫌いでした。
4枚落ちは2枚落ちの定跡を使っていました。飛車角だけでなく、香車が無いのだからなおよし、という考えです。あれこれ覚えるのが面倒な方にオススメします。
2枚落ち定跡は2歩突っ切りと銀多伝がありますが、将棋大観や他の著書でも2歩突っ切りを勧めていたと思います。私も2つも覚えるのは面倒ということもあり、銀多伝は覚えていません。
飛香落ちは端の垂れ歩くらいは狙えばよいでしょうが、1枚落ちは定跡に頼らず好きに指せばよいという考えです。
香落ちは奨励会員しかやらないのでしょうが、五段のおじさんは振り飛車にすれば上手有利と言っていました。しかしプロは下手必勝と言っているので、そんなものかくらいに思っていました。今の時代はソフトにかければ分かるのかもしれません。
上手をもつことはほとんどありませんでした。
やられて嫌なのは攻め合いです。下手としても怖いのかもしれませんが、上手をもつと分かります。上手がお神酒指しをしてきたら、勝ちにはこだわっていないと見てよいと思います。
ラクなのは、下手が受け一方の手を指すことです。反面教師になるので、上手をもつのも勉強になります。
プロとの駒落ちの適正な手合いについて
アマチュア同士の手合いは指標がありますが、プロとの指導対局におけるそれはあまり見かけません。人によって言うことが違うので迷いますが、ここでも私の独断でプロとの手合割を考えてみます。
加藤一二三の棋力判定で「プロに2枚落ちで3連勝できれば三段はある」というものがあります。これはかなり的確だと考えています。
2枚落ちは三段あればまずプロに勝てるが、怪しいところもあるという感じです。私の棋力が三段くらいなのですが、2枚落ちは指したくありません。
三段以上は四段も含めて、飛車落ちが適正だと思います。
3年くらい前に有吉道夫さんに教えていただいたときも飛車落ちでした。最終盤までついていったので、強引な技をかけて逆転を狙うようなことはしなかったというような感じでした。
それより以前、それでも引退後でしたが、四段に飛車落ちで勝つところも見ています。四段相手なら角落ちが適正だと考えていたので驚きました。角落ちが適正な手合いとなるのは、全国強豪クラスになるでしょう。
初、二段は2枚落ちでよいと思います。
どうしても勝ちたいのであればもっと駒を落としてもらえばよいのですが、2枚落ちが駒落ちの限度という意見を聞いたことがあります。そう言ったのはアマチュアですが、私も同意見です。4枚、6枚と駒を落としてそれで勝ったとしても、プロは負けた立場では指し手の指摘はしづらいでしょう。
級位者は4枚落ちでも勝てないと思うので、4枚までならあり得るのかもしれません。
6枚落ちというレベルであれば、それでプロの指導を受けるのはもったいないです。プロと駒落ちを指すのであれば、もう少し勉強してからの方がよいと思います。せっかくの機会なのですから。
プロと平手で指してよいのか
昔は失礼という感覚があったように思います。今もそうなのかもしれませんが。
インターネットの黎明期に、将棋連盟の対局サイトで有料の指導対局をやっていました。そこでは「平手での申込みはご遠慮ください」と書かれていました。これは間違いなく、平手で負けたらプロの権威が損なわれるとの考えからだったのでしょう。
昔友人が地元のプロに平手で申し込んで断られたことがありました。その時は「いやです。」とだけ言いました。感じが悪いと思いました。
山口瞳の本だったような気がしますが、プロが駒落ちを指す理由を書いていました。
一つは、負けても言い訳できるようにしておくため
もう一つは、より屈辱を与えるため
さすがに駒落ちごときにそこまで入れ込むヤツがいるというのは、甚だ疑問です。
そういえば実力のないプロがいくら負け続けても強引に角を落とそうとしたという話は、よそでも読んだことがあります。そういう人もいるのかもしれません。
将棋の駒落ちは置碁と違って別のゲームのような感じになるので、負けても平手で指したいと考えるアマチュアは多いと思います。私の場合、小さい大会や支部の集まりで頼んだ時には受けてもらえました。
プロとの平手で思い出しましたが、女流プロとの適正手合いについても書きます。
女流プロとの駒落ちの適正手合いについて
はっきり言って昔はレベルがものすごく低くて、私も平手で勝ったことがあります。女流の標準棋力はアマ三段、タイトルホルダークラスでもアマ強豪には勝てないという感じでした。
それが今や奨励会の三段まで到達できる女性が複数出てくるという状況になっています。今をときめく女流六冠は、デビューして2冠くらい取っていた頃でもアマ四段に歯が立たなかったという話を聞きます。レベルの向上が著しいです。女流全体が底上げされたのか、トップクラスのレベルが上って個人差が広がったのかは分かりません。
女流プロの指導対局は、有段者は角落ち、級位者は2枚落ち、というのが無難だと思います。
団鬼六の棋力は?駒落ち棋譜集について
今は電子書籍でも読めるのですね。前書きによると女流との平手戦で負け越しとのことなので、棋力は二段程度と思われます。安部譲二と同じくらいということです。
目次によると「天才・羽生に勝つ!」とあったので当然2枚落ちかと思ったら、なんと飛車落ちです。これは八百長…いや、本気を出さなかったに違いありません、相当。
小池重明にすら飛車落ちで一度も勝てなかったというのは有名だというのに。
つるの剛士の将棋の実力は?
アマ三段という話です。
昔から著名人には免状がバラまかれているのですが、そのくらいなら信憑性があります。もし著名人で四段以上がいたら、それはウソだと思って下さい(笑)
過去は歴代首相に六段免状を送っていた時代もありました。
本書に登場している矢内理絵子さんとは、角落ちで教えていただいたことがあります。一手差だったので、勝ちをを譲られた可能性もあります。
そのイベントでは、森内名人と地元の県代表との角落ち戦がありました。いい勝負になると思いきや、アマのボロ負けでした。下手の角が目標にされて、無いほうがかえってよいような感じの内容でした。
角落ちはプロが本気に勝ちに来る手合いと聞いたことがあります。角落ちで負けたら、平手でも負ける可能性があると見られるからかもしれません。この手合いは飛車落ちと違って、見た目ほど平手との差がないとも言われています。
他にも著名人の棋譜集があればお知らせ下さい。
将棋の棋譜の価値、魅力について
私も本気で指した将棋の棋譜は、なるべく残しておきたいと思っています。大会の予選の棋譜が、何度か新聞に載ったこともあります。
10年前くらいまでは、昼に指した将棋を夜に帰宅してからPCに保存するようなことが出来ていました。最近では指した直後に再現することもあやしいです。そして最近は大会に出なくなったので、本気の将棋を指すことも少なくなっています。
棋譜というものは、写真や当時流行した音楽のように、当時の思い出を蘇らせてくれます。勝った負けただけが楽しみというわけではありません。
破天荒な人生を送った安部譲二さんが、どのような棋譜を残したのか興味があります。
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