年末といえば忠臣蔵です。
とはいっても毎年見るものでもないのでしょうが。数年間隔で忠臣蔵の関連作品が発表されていることから、やはり日本人に愛されていることが分かります。
ただ派生・亜流という系統の内容が続いていることが気になっていました。
最後の忠臣蔵のような、討ち入り後の残党を描いたもの。
役所広司主演の時代劇映画の内容をわかりやすくまとめてみた!!!!!
女性視点のものもあります。最近では「忠臣蔵の恋」、昔には内匠頭の奥さん・瑤泉院が主役の忠臣蔵がありました。
討たれたはずの上野介は実は影武者だったという「必殺・忠臣蔵」なんてのもありました。
今は『決算・忠臣蔵』という映画が上映されています。
討ち入りを経営という視点で描いた、コメディタッチの異色作です。来週のメンズデイに見てこようかと思っているのですが…
忠臣蔵の最新作は?おすすめの最高傑作はこれだ!
近年は、意外とオーソドックスでケレン味のない忠臣蔵というものがありません。
調べてみたところ、2003年(平成15年)正月の『忠臣蔵〜決断の時』が最後でしょうか。テレビ時代劇のキャストがほとんどいなかったため、あまり印象に残っていません。当時人気があった松浦亜弥が端役で出ていたことだけ覚えています。
同時期、松平健の忠臣蔵も制作されました。しかし内容はこれもまたほとんど印象に残っていません。
これらも悪くはないのかもしれませんが、最初に見た作品が強烈だったので、あとから見た作品が霞むということはあり得ると思います。
それが昭和60年(1985年)の里見浩太朗主演の忠臣蔵です。
昔のドラマには大物役者を惜しげもなく配した、オールスターキャストと呼べる作品がよく見つかります。制作費を奮発したのか、あるいは役者が当時はまだ下っ端だったのか、その両方ということもあるでしょう。
三船敏郎の忠臣蔵も、そのような感じでした。
先日の梅宮辰夫さんの訃報で「仁義なき戦い」が注目されましたが、名前だけ見ては誰が主役か分からないほどの大物俳優陣が出演していました。
里見浩太朗の忠臣蔵も、例えば西田敏行が端役で出ていたりします。しかしメインキャストは当時すでに大物でした。
当時の世相は結構記憶に残っています。時代はバブル前夜、制作費を相当つぎ込んだはずです。
以降数年続いた年末時代劇の第1作でもあります。紅白歌合戦にぶつけることが無謀とも言われていました。当時の紅白の視聴率は70%近くありましたから。
しかし本作の成功の余勢を駆って制作された翌年の『白虎隊』は、紅白裏番組の当時の最高視聴率を更新しました。また、紅白が視聴率面での曲がり角を迎えた年ともなりました。
時代の勢いをも内包したこの作品のパワーは、30年以上経過した現在でも色褪せることはありません。
アマゾンプライムビデオで里見浩太朗の忠臣蔵を観ることができます。
忠臣蔵里見浩太朗版のキャスト紹介 どんな役をやっていたのか
里見浩太朗 大石内蔵助
里見浩太朗公式サイトのプロフィールでは、『水戸黄門』と『長七郎江戸日記』が代表作として紹介されています。
しかし私としては、一番のハマリ役は『忠臣蔵』の大石内蔵助だと思っています。
時代劇の主役は大立ち回りを演じることがほとんどですが、物腰が柔らかい内蔵助というキャラクターが新鮮に感じたのかもしれません。
風間杜夫 浅野内匠頭
年末時代劇の常連でしたし、そういえば銭形平次では主役を演じていました。
そう、主役を張れる役者なのです。今となっては正直ちょっとピンときませんが。
もう何年も見かけないのですが、当時はそれなりのビッグネームだと子供心に思っていました。
考えてみたらもういい年齢のはずです。調べてみたところ、ちょうど70歳でした。
私は松の廊下をネタにしたドリフのコントが大好きなのですが、内匠頭にあれを見せたら苦笑いするだろうなと思うのです(笑)
加藤茶のように上野介の袴の裾を引いてひっくり返してやればよかったのでしょうが、そうなれば忠臣蔵の物語も生まれなかったわけです。
森繁久彌 吉良上野介
今にして思えば初めて見る忠臣蔵であれば、もっと憎々しい上野介の方が望ましいのではないかと。
森繁久彌は大物ではありますが、悪役俳優ではありません。新しい上野介像を作り上げたいと、かなり乗り気だったようです。
ドリフのコントでは、志村けん演じる上野介が「殿中でござる」と叫んでも、周りの者に無視されて斬られてしまいます。
松の廊下で上野介に斬りつける内匠頭を取り押さえた人は、当時相当顰蹙を買ったそうです。私もある意味、上野介以上に許せないものがあります。
しかしそれがなければ忠臣蔵の物語も生まれなかったわけです。
多岐川裕美 瑤泉院
内匠頭の奥さんです。
討ち入り前夜瑤泉院を訪ねた内匠頭が、上野介の間者が忍んでいることを察して、討ち入りを打ち切ったと申し出ました。
瑤泉院は悪しざまに罵って内匠頭を追い返すのですが、残した血判状を見て彼の真意を知ります。
女性視点の忠臣蔵作品も多くありますが、子供の頃あのシーンを見て思ったことは、やはり忠臣蔵は男の世界だということでした。浅はかに内匠頭をののしった女どもは引っ込んでいろと。
また、浪士たちが女子供になるべく累が及ばないように心遣いをしたことも、彼らの男らしさの表れでありドラマの見どころでもあります。
西郷輝彦
討ち入りに参加しなかった浪士の役です。こういうのも、人の数だけドラマがあったことでしょう。
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西田敏行
垣見五郎兵衛という、内蔵助が騙った人物の役です。
本人が乗り込んできて抗議をするのですが、正体を内蔵助と察した五郎兵衛は、自分がニセモノであるとして身を引くのです。
「上品な方がホンモノだ!」というセリフが奮っています(笑)
男や…
感動のエピソードです。
歌舞伎が原作で史実にはなかったとのことですが、そんなことはどうでもいいです。
討ち入りの日に実は雪は降っていなかった、程度ならまあよいのですが、感動に水を差す史実をあれこれふれ回るのは好きではありません。
内匠頭は本当の乱心者だったとか、内蔵助とは実は仲が悪かったとか。不快なので見ませんでしたが、そんなこと、証明のしようのないことだと思うのですがね。
娯楽でドラマを見ているのですから、立派な人達がいたのだと感動することが大切なのです。
これについては、最後のまとめでもふれます。
よいエピソードなのですが、役としては端役です。西田敏行が演じる役ではないのですが、30年以上前の下積み時代ならではのことです。マゲ姿とはいえ、西田敏行に見えないんですよね。
八代目 中村芝翫
今となっては歌舞伎界の大物ですが、本作ではバカ殿っぽい上野介の息子役です。
最近のドラマでは、ボンクラの3代目社長役を演じていました。
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歌舞伎を見たことのない私にとっては、必殺仕事人のイメージです。
丹波哲郎
吉良の息子が治める上杉家の家老役です。お家を守ることを何よりも優先する冷徹な人物ということなのでしょう。
しかし本作の丹波哲郎演じる家老は、冷徹というより上野介のことなど何とも思っていないように思えました。
むしろ赤穂浪士たちに心情的には肩入れしているのではないかと。そこにニヤリとさせられました(笑)
西村晃・佐野浅夫
討ち入り後の浪士たちの処遇をどうするか、それを将軍綱吉が議論させた学者たちです。同じ水戸黄門役者でありながら、二人は対照的です。
西村晃は悪役出身でした。
本作でも浪士は切腹に処すべきだと主張します。しかし彼らを惜しむ心は皆と同じであるとも言います。
忠臣蔵では、役者が泣くシーンが意外と少ないです。
泣くのは視聴者の役割とも言えるのでしょうが、同じようになって劇中では佐野浅夫だけが泣きまくっていたのが印象に残っています。
上原謙
困り果てた綱吉が判断を仰いだのが、仏教の法王みたいな人でした。1分程度しか出演しない端役ではありますが、将軍の上座につくような人物なので誰でもいいというわけにはいきません。
とはいえ惜しげもなく上原謙を据えるとは、当時の潤沢な予算が伺えます。
あおい輝彦、伊吹吾郎、火野正平
本作は水戸黄門組と長七郎江戸日記組がほとんどを占めています。あおい輝彦、火野正平は浪士役、伊吹吾郎は吉良邸の隣家の主人役でした。
キャストについては書こうと思えば、まだこの倍は書けます。次で一応最後としましょう。
夏八木勲
将軍綱吉役です。バカ殿には似つかわしくない大物役者です。
近年では綱吉も名君だったという説が出てきています。
衆目を集めるためならなんでもありの、こういう風潮はあまり好きではありません。この流れでまとめに入ります。
忠臣蔵(里見浩太朗版)感想まとめ
綱吉は他の時代劇でもバカ殿ですし、側用人の柳吉保まで悪役の定番となっています。
生類憐れみの令も、少なくとも私の世代では悪法として刷り込まれています。
しかし新説では、戦乱の世が続いたから強引にでも殺生を禁ずることによって民衆の意識の変革を試みた、などと言われているようです。
来年の大河ドラマも、長年悪役だった明智光秀が主役とのことです。
織田信長が暴君だったことは、昔から言われていました。理屈としては分からないでもありません。
鞍馬天狗と新選組の立場が、今では逆転しています。坂本龍馬や原田甲斐も今では英雄です。時代の流れでどうにでもなるものなのかもしれません。
しかしそれでも明智光秀が主役というのには、強烈な違和感があります。
世も末と感じるのは私だけでしょうか。今では小心者でしかない小早川秀秋も、関ヶ原の戦いのキーパーソンと持ち上げられる時代が来るのでしょうか。いずれ赤穂浪士を悪役に、上野介が主役のドラマでも作ればよいでしょう。
冗談に聞こえるかもしれませんが、赤穂浪士をテロリストとする意見もあるようです。また、上野介は地元では名君だったとも。
テロリストが絶対悪というのも異論のあるところで、ならばレジスタンスと呼んではどうでしょう。
上野介が地元で手厚かったとしても、そのこととヨソでワイロをタカっていたこととは何の関係もありません。
衆目を集めるために何でも逆を張る、こういう風潮はいつから始まったのでしょう。
記憶にあるのは、自分の子供に悪魔と名付けようとしたバカ親が出てきた時のことです。日本中が騒然となりました。
しかし真にバカげていたのは、世論がこれに対して賛否両論となったことです。地裁判決は命名した親側の勝訴となり、マスコミも時の人としてもてはやしました。
どんどん話が脱線していきましたが、奇をてらわぬストレートな里見浩太朗版『忠臣蔵』を、30年を経た今こそ見てもらいたいと思います。
アマゾンプライムビデオで里見浩太朗の忠臣蔵を観ることができます。
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キャスト以外のスタッフも素晴らしかったです。
当代一のナレーターといえば芥川隆行でしたが、本作の鈴木瑞穂のナレーションも全く遜色のないものでした。
赤穂浪士が討ち入り後すぐに切腹しなかったのはナレーションでの説明通り、綱吉にせめて一矢報いてやろうという思いからだったと信じます。異論で言われるような打算からではありません。
少なくともそんなことは、本人たち以外知りようがないことではありませんか。無意味にくさすようなことをするのは、赤穂浪士が嫌いな日本人がいるということなのでしょうか。
少なくとも私はこの作品を子供の頃に見て、それ以来赤穂浪士たちが大好きです。
それゆえ新説や異論を聞かされると、夢を壊されたような気持ちにさせられます。
もっと言えば、私にとってはこのドラマが史実です。細かい話は学者が学会の中だけでやって下さいという感じです。
当時いっしょにドラマを見ていた妹が、大学生になって赤穂神社を訪れていたことを知ったのは最近のことです。そこまで好きだったのかと、少々驚かされました。
団塊ジュニア世代には、かなり大きい影響を与えた作品なのかもしれません。
親は本作を見た上で、長谷川一夫版の方がよかったなどと言っています。
これも子供の頃の刷り込みの一つかもしれません。もう私にとって、里見浩太朗版を超える忠臣蔵は出てこないでしょう。
しかし冒頭に書いたように、オーソドックスな忠臣蔵は久しく制作されていないようです。
日本人の心を伝えるためにも、新たな世代へ向けた忠臣蔵が必要とされているように思います。
忠臣蔵主題歌 堀内孝雄『憧れ遊び』について
最後に音楽について。
堀内孝雄のピークは、次作『白虎隊』の主題歌『愛しき日々』だと思っています。
以降の年末時代劇、そして『はぐれ刑事純情派』の主題歌でも多くの作品が作られましたが、それらは少しおとなしいという印象があります。粒ぞろいではあるのですが、悪く言えば小粒といいますか。
しかし忠臣蔵の主題歌『憧れ遊び』は、『愛しき日々』に比べても決して遜色のないものです。
新作を望むと言いましたが、少なくとも音楽は全然古くなっていませんね。そしておそらく本編も。今年の年末は久しぶりに見てみようかと思います。
長文につきあって頂いて、「サンキュー!」(堀内孝雄風に)
『忠臣蔵』で検索してください。いろいろな忠臣蔵が見つかります。
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